アグラオネマの美しさ


葉の上に、規則性のない模様がある。

左右対称ではなく、似ているようで全然違う。
同じ柄に見えて同じ葉は1枚も無い。

そんな葉模様に引き込まれ、好きになっていった。

多分これは、斑入りが好きな理由とも重なっている。

整いすぎていないものが、なぜか美しく見える。そんな感覚を、この植物から教えてもらっている気がする。


目次

アグラオネマについて

アグラオネマは、サトイモ科アグラオネマ属の植物。

東南アジアを中心とする熱帯地域に分布し、日本ではリョクチク属と呼ばれることもある。属名は Aglaonema

栽培品種や選抜個体がとても多く、交配や実生選抜によって、現在もさまざまな表情を持つ株が生まれている。

学名、栽培品種名、流通名、選抜個体名が混在していて、整理しきれていない部分は多い。

ここでは分類や名前について深く掘り下げず、同じ属の中に、これだけ幅のある表情が存在しているということだけ書いておきたい。


最初に育てた株

5年ほど前、初めて購入したアグラオネマは「マリア」だった。

濃い緑の葉に、白や淡い緑のまだら模様が不規則に入る。特別に珍しい品種ではないけれど、あのとき見た模様の入り方は、今でもなんとなく覚えている。

当時は品種名も分類もほとんど知らず、ただ「なんとなく気になった」という理由だけで連れて帰った。

振り返ってみると、その感覚は今もあまり変わっていないと思う。

名前や希少性を知る前に、まず現物を見て気になるかどうか。

自分にとって植物を選ぶ理由はそこにある。


ピクタムに沼ってハマった

しばらくして出会ったのが、アグラオネマ・ピクタムだった。

緑、黄緑、深緑、白、黒。
複数の色が不規則に入り混じる迷彩柄に、完全にやられた。

規則性のないランダムに入る模様で同じ柄は1枚も無い。

特徴は個体ごとにある程度出るが、ちょっとした模様の違いや、葉の形状で変化がある。

ここから、本格的にアグラオネマの沼へ入っていったのだと思う。

最近は明るく派手な迷彩柄だけでなく、渋い深緑の上に銀色がのるような、暗く静かな表情の株に惹かれることが増えている。

細葉が好きだったが、大きな葉も魅力に感じるし、幼苗のまだ模様も出ていない緑の葉さえ素晴らしいと感じる。

つまり、どんなアグラオネマでも美しいと思ってしまうくらい沼ったのだ。


育成環境について

株が増えていくうちに、部屋の環境だけでは管理しきれなくなり、IKEAのコレクションケースを使って育成ケースを自作した。

中に組み込んでいるのは、主に次の設備。

  • 水槽用のスティックLED
  • PC用ファン
  • 爬虫類用のタイマー付きミスト発生機

スイッチボットでエアコンを動かし温度を管理して、タイマー制御でLEDをコントロールし昼夜を再現、ファンで空気を循環させ、ミスト発生機で湿度を調整している。

ケース内は、温度23〜27℃、湿度70〜90%ほどを目安に管理している。

ただし、すべての株を同じ環境に入れているわけではない。

あえてケースへ入れず、部屋の常湿環境で管理している株もある。

すべてを同じ条件へ揃えるより、株ごとの適応や変化も含めて観察したいと思っている。

植物にとって理想的な環境を作ることと、自分が無理なく維持できる環境を作ることは、少し違う。

長く続けるためには、その間のちょうどいい場所を探す必要がある。


うまくいかなかったこと

今年の梅雨は、ミストの設定を誤ってしまった。

雨が続く日と、段々気温が高くなってくるタイミングで、仕事の出張が重なってしまい1週間ほど、ケース内の温度と湿度がかなり高い状態が続き、結果として葉が黄色くなった株がいくつも出た。

最初は根が痛んだかと思い鉢から出してみたがそれほど痛んではなかった。

高湿度を好む植物だからといって、湿度を高くすればするほど良いわけではない。

湿度が高くても空気が動かなければ蒸れやすくなり、温度まで上がると、植物への負担はさらに大きくなる。頭では分かっていたつもりでも、実際に失敗してみると、環境のバランスの難しさを改めて感じる。

ただ、すべての株が同じように調子を崩したわけではなかった。

ハイエロファントグリーンやブラックとして管理している株は、高温多湿の環境でも新芽を動かし、花芽まで上げたものがある。葉を傷めた株がある一方で、むしろ生育が活発になったように見える株も出てきた。

同じ属で、同じケースの中に置いていても、株の状態や根量、葉の成熟度、ちょっとした配置、もともとの性質によって反応は違う。

今回の経験から、高温多湿が良いか悪いかを一つの答えで決めるのではなく、その環境に対して各株がどう反応しているかを見ることの方が大切だと感じた。

葉が黄色くなった株だけを見れば失敗だけれど、新芽や花芽を動かした株を見ると、その環境が完全に間違っていたとも言い切れない。

うまくいった記録だけを残すつもりはない。葉が傷んだことも、逆に勢いが増した株があったことも、その時点での育成記録として残しておきたい。


ネームド株について

エウレカ、ニルヴァーシュ、法皇緑、白虎など名前の付いたアグラオネマ、

いわゆるネームド株と呼ばれる個体も、いくつか手元にある。

名前が付いていることで惹かれる瞬間は正直ある。

作出者や選抜者が、その株の特徴を見て考えた名前には、単なる識別番号とは違う魅力がある。

名前をきっかけに、その植物の背景や作出者の考えを知ることも楽しい。

ただし、名前や流通の背景だけで植物を語ることは、あまり好きではない。

ハマり始めた頃はネームド株が欲しくてその株が綺麗とか自分好みなど考えずに買っていた気がする。

もちろんネームド株は綺麗だし名前が付くには理由があり素晴らしい株が多い。

でも、今では名前だけで選ぶのではなく、見た目の好みが最優先で選んでいる。

非ネームド株でも自分の好きな株から、新しい葉の展開を見たときに好みの柄、形だった時に感じる喜びの方が、自分にとっては大きい。

名前の裏にある時間や思いには敬意を持ちつつ、最後は現物を見て判断したいと思っている。


用土について

現在使っている用土は、ねこチップを使ったり、室内園芸用のブレンド用土、硬質赤玉土や鹿沼土、日向土などがブレンドしてある通気性と保水性のバランスがいい用土を使ったりしてる。

株分け直後や、まだ根が少ない株には水苔を使うこともある。根の状態や株の大きさによって、用土や管理方法を変えている。

現在土を使ってる株は同じ配合を使っているわけではない。

最適な用土を模索中で色々試している最中で、やり過ぎてどの株にどんな比率の用土を使用したか分からなくなってしまっている。

今後の植替えした時はしっかり記録を残そうと思っている。

自分の環境に合わせて管理しやすい用土を見つけていきたいとおもう。

育成方法は、用土だけでは決まらない。

光、温度、湿度、風、水やりの間隔まで含めて、一つの管理方法になる。


株を増やす方法について

茎を切り離して増やすときは、いきなりカットせず、先に節の周囲へ水苔を巻いて発根させている。

手順は、だいたい次のような流れ。

  1. 切り離したい節の周囲へ水苔を巻く
  2. 十分に根が出るまで待つ
  3. 根を確認してから茎をカットする
  4. 切り口を水に付けてアク抜きする
  5. 切り口を乾かし、必要に応じて瞬間接着剤で保護する
  6. 用土へ植え付ける

先に発根させておくことで、切り離した後の負担を少なくできると考えている。

ただし、根が出ていても、その後必ず問題なく育つとは限らない。

カット後の蒸れ、過湿、乾燥、切り口からの腐敗など、気を付けることは多い。

慣れれば難しい作業ではないけれど、水苔の中で根が伸び、切り離した株が一つの株として独立していく過程には、毎回少し緊張する。


交配について

今年、アグラオネマの交配へ初めて挑戦した。

花粉を採り、別の花へ付ける。

文字にすると単純だけれど、開花のタイミングが合わなければ成立しない。花粉が出る時期も、受粉できる時期も短く、思っていた以上に観察が必要だった。

まだ結果と呼べるものはほとんどなく、現在は経過を見ている段階だ。

受粉が成功したのか。
種子ができるのか。
その種子が発芽するのか。
どんな模様の株が生まれるのか。

今の時点では、何も分からない。

しかし、記録を続けていくと、今回の経験を次に活かせると思う。

何が良かったのか、いけなかったのかを記録を続ければ見返す事ができる。

交配では親の特長を引き継いでくれるとは限らない、どんな柄でどんな葉の個体が出てくるか分からない。

それは、購入して育てることとは、また少し違う楽しさなのだと思う。


違和感が美しさになるまで

5年前に「マリア」を連れて帰ってから、気付けばピクタムにハマり、育成ケースを作り、株を増やし、交配にも手を出すようになった。

途中でうまくいかなかった時期もあった。

育成環境を整えてしっかり管理したつもりが、棒にした事も根を傷めたこともある。名前の付いた株を前にして、植物そのものを見ているのか、名前を見ているのか、自分の考えが揺れることもあった。

それでも、模様や色に惹かれるという最初の感覚だけは変わっていない。

整った完成形よりも、少し歪んでいたり、不規則だったりするものの方が、結局は記憶に残る。

一枚ごとに違う模様。
予想どおりには進まない成長。
失敗を含めて変化していく株。

その不安定さや不揃いさが、いつの間にか美しさへ変わっていく。

これからも、うまくいった話だけではなく、迷ったことや失敗したことも含めて、その時々の記録として残していきたいと思う。

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